「タイム イズ マネー」。貴重な時間を使って、有意義な人生を送りたい。
「有意義な人生を送る」というモットーの下、生きていくことにした時、他の人がやっていないことで、社会にとって重要なことはなんだろか、と考えました。そんな折、シンガポールのゴー・チョクトン首相の「我々は社会的な上品さを、公共のトイレの綺麗さで語るべきだ」という言葉に心が奪われました。そしてすぐ私は自分の生活収入を安定させられる事業を1つ残して、それまで運営していた会社を清算。社会事業に全力を尽くすことしたのです。
まず1998年に「Restroom Association Singapore (RAS)」を結成しました。そしてメディアを通じて、トイレの環境改善の重要性を説き始めました。これまでタブーとされてきた公共の場で、トイレの話しをするには、ちょっとしたジョークが必要でした。私たちは、すべての人が、いつでもどこでも清潔で安全なトイレを使える日まで、この話題が常に注目されるようにしてなくてはいけないと活動を続けました。
世界トイレサミットが、世界トイレ機構(WTO)をさらに飛躍させた。
私は、「World Toilet Organization(世界トイレ機構)」通称「WTO」という組織を結成しました。この名前をつけたのは狙いがあって、ジョークや話題のネタになるからです。
2011年「World Toilet Summit(世界トイレサミット)」を開催するにあたり、小さなNGOであった私たちは、クリエイティブなアプローチを考えざるを得ませんでした。私は、ある展示会の主催者にブース販売をタダで肩代わりする代わりに、無料で会議室を使わせて欲しいと交渉したのです。お互いに取って、win-winのプランを考えた結果、無事に無料で会議室を確保できたのでした。
次に、サミットの成功のためには要人の出席が必須でした。私の実直な訴えに耳を傾けてくれたシンガポール環境水資源省が運営する「National Environmental Agency (NEA)」のディレクターのおかげで、シンガポール政府の環境省大臣が出席を承諾してくれました。最終的に15か国の政府関係者も集まったイベントとなリ、世界中のメディアが世界トイレ機構やサミットについて報道したのでした。
以後我々の活動やWTOは、急速に認知度を高めていきました。そして、2013年には国連加盟国すべての193か国から支持され、「世界トイレの日」が国連の公式国際デーに採択されました。
タブーからメディアの虜へ。
ユーモアをプラスし、トイレ問題は永遠に注目される問題へ。
2005年には、ロビー活動が功をなし、シンガポールの建築法を改定させることに成功しました。女性の個室トイレの数を増やすというこの規定は、後に世界的にも標準化されるものとなりました。
こうしたトイレ問題の法的なステータスの影響もあり、政治家たちは選挙の争点に採用するようになりました。インドでは、選挙活動の公約の一つに「トイレ」を選んだ元首相のモディ氏が選挙で圧勝し、公約通り現在1億1千個のトイレの建築を推進しています。
タブーから、ジョークに、そしてメディアの虜へ。さらに法的な整備を経て生活の「普通」の話題へと、私はトイレを変えてきたのです。それは長い道のりでした。ユーモアたっぷりに話しをすれば、人々は笑い、話しに耳を傾けて、さらに実際に行動を起こしてくれます。今ではハリウッド俳優のマット・デイモンでさえ、自身が関わらす「水」の非営利団体を面白おかしくプロモーションするために、世界トイレの日を利用するほどです。
スキャンダルや災害と言った世界には常に様々な問題が存在します。そんな中での私の役目は、いつまでも「トイレトーク」に人々が注目するようにすること。そのために、私はこれからも走り続けます。